シャトーヌフ・デュ・パプ
フランスを代表する歴史あるアペラシオンの一つ、シャトーヌフ・デュ・パプ。「法王の城」と言う名が付けられたこのアペラシオンは、丸石がゴロゴロと転がる非常にユニークな土壌が特徴であり、比類するものがない複雑で多彩な表情を持ったワインが生まれます。
紀元前からワイン生産の歴史があるローヌ地方ですが、現在まで続くシャトーヌフ・デュ・パプが誕生したのは14世紀の事でした。当時ローマの法王庁が、アヴィニョンに移転されるという歴史的な事件が発生、それまで片田舎に過ぎなかったシャトーヌフ・デュ・パプ周辺は、ワイン産地として大いに賑わいを見せ始めたのです。そもそもシャトーヌフ・デュ・パプは「法王の新城」という意味であり、アヴィニヨンのすぐ北にあるこの地に、法王の別荘が建てられたのが名前の由来でした。現在もシャトーヌフ・デュ・パプのワインボトルには伝統として、法王の紋章が浮き彫りで刻印されているのを多く見つける事ができます。
シャトーヌフ・デュ・パプといえば、赤い粘土の上を埋め尽す、古代ローヌ河によって運ばれたゴロゴロと転がる圧挺の丸石が有名。この丸石は一見して乾燥した荒れた土地のように見えますが、ブドウにとっては通気性に富み水はけの良い素晴らしい条件が揃っています。土壌が痩せているおかげでブドウ樹は栄養を求めてあちこちに根を張り地中深くへと根を伸ばしていき、雨水ではなくミネラル分を多く含んだ地下水を吸収することができます。さらにこの丸石は日中の太陽熱を蓄え、夜中に保温の役目を果たすためブドウの熟成に大きく役立ち、素晴らしい凝縮感をもったブドウに育ちます。
シャトーヌフ・デュ・パプには他にも、砂地、粘土の上にゴツゴツした石灰岩、赤い砂岩という特徴的な土壌が見られ、これらの土壌の組み合わせこそがシャトーヌフ・デュ・パプのユニークなテロワールの要素のひとつとなっているのです。
シャトーヌフ・デュ・パプに使用できるブドウ品種は、グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル、サンソー、クレレット、ヴァカレーズ、ブールブーラン、ルーサンヌ、クノワーズ、ミュスカルダン、ピクプール、ピカルダン、テレ・ノワールの13種で、フランスのAOCでの使用ブドウ品種数の中では最多を誇ります。
ブドウの各品種が色合いや構成力、香り、フレッシュ感、熟成力においてそれぞれの特長をワインにもたらします。特にグルナッシュは、構成力と力強さ、長期熟成力に長けたブドウとしてシャトーヌフ・デュ・パプに欠かせない存在。また、これら13種全てをブレンドしてもAOCシャトーヌフ・デュ・パプと呼べるワインを造ることができますが、5、6種のみをブレンド、またはグルナッシュだけを使用してワインを造る生産者もあり、使用するブドウ品種の割合によってシャトーヌフ・デュ・パプの生産者だけがもつ強烈な個性が生み出されます


